今回の記事で紹介する方法の本質は「ネームを軽くして、素早く・気軽に何度も試せるようにする」ことです。
「ネームをやりたくない!」でもネーム省略は落とし穴 #
ネームはマンガの設計図にあたる工程。下描きの前段階にあたるラフスケッチのようなもので、話の流れやページを確認するために超簡易的にマンガを描きます。ここでマンガの骨格が固まります。
ネームもやってみると結構大変な作業ですが、だからといって、いきなり下描きや原稿から始めると遠回りになりがちです。途中で流れを直したくなったりページ内に収まらなかった…となれば、作業コストは膨大で、比例して時間も要します。
面倒に感じる作業だからこそ、むしろ軽いネームで「失敗したら直す」を繰り返せるのが、結果的に一番楽だと思います。
だから私も、ネームにかける労力を可能な限り小さくする方法をたくさん模索してきました。
「フキダシとコマ割り」で作るネームとは #
ネームは簡単ながら「絵」で描くのが一般的。
しかし今回紹介するのは、ネーム段階では「絵」をすっ飛ばすというやり方です。絵を描くのを、ネームが完成したあとの下描き工程に入るまでほぼやりません。
セリフの入った「フキダシ」を置いて「コマ」を割る、を基本にして作業を絞ります。
作業工程と流れ #
アナログでもできないことはないですが、方法論はデジタル環境前提です。クリスタなどはもちろん、canvaやパワーポイントでもいいし、無料の「マンガネーム作成ツール」(後ほど詳しく解説)もおすすめです。
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セリフのフキダシで話の流れをつくる
まずはセリフのテキストを書いて、ページを分けてざっくり配置します。読みやすい位置で改行をし、同時に、セリフの重要さや声の大きさによって大きさの強弱をつけ、フォント(書体)まで決めておくと楽です。
※ページの分け方としては、めくりを意識し、特に「雰囲気がガラッと変わる」ターニングポイントとなるセリフはめくりどきです。また、ページ内が文字だらけにならないように、好きなマンガを開いておいてフキダシ数や文字量を参考にするのもおすすめの方法です(構図は真似しないように!)。
テキストを囲うフキダシの種類もこの段階で決めます。Related articles
フォントやフキダシの使い分けで、効果的なセリフの見た目をつくる
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コマ割りを追加しながら各ページの調整
各ページにあるフキダシの位置を読みやすい位置に調整しながら、その区画を分けるイメージでコマ割りします。コマはセリフの重要度で大小メリハリをつけるとやりやすいです。
※コツをつかむまでは会話のキャッチボール1往復=1コマを基準にしておき、セリフを印象付けたり間をつくるときにはコマをまたいだり、逆にサーッと読ませたいときは1.5〜2.5往復程度を1コマに詰めてしまうと良いです。
この2つの工程だけでネームが終わります。
【ヒント】絵の代わりにテキストを使い、表現しづらければ絵に頼ってもいい #
ネーム時点で、ここの絵は決め打ちでいきたい、と決まっているときはテキストで「後ろで苦笑いしてるとこにフォーカス」「飛ぶ様子をアオリで」等とメモを書いておくと良いです。
また、先ほどから「“基本的に”フキダシとコマ割りだけ」と言っているように、「絶対に絵を書いてはいけない」という縛りはありません。最終的には絵を入れて完成するものなので、時には絵で説明したほうが早いこともあります。
「結局絵を描かなくちゃなのか…」と思うかもしれませんが、必要だと感じたときだけです。基本が「絵」か「絵以外」では作業コストが全く異なります。
「ついスマホを見て過ごしてしまう」その時間を使って、無料ツールで手軽に実践 #
紹介した方法を手軽に試せるのが、「マンガネーム作成ツール」です。
マンガのネームに特化して機能が絞られたこのツールは、まさに紹介した「フキダシ・コマ割りで構成を固める」という工程にぴったり。
高機能なお絵描きアプリとは違って、「クオリティはネームに必要な程度であればいいから、とにかく手軽さ」を求めてつくられたツールだからです。
特に便利なのが、ブラウザで動作するのでインストール不要、しかも無料でスマホから使えるという点です。小さな画面に向いたシンプル設計の為、移動中や寝る前など、ちょっとした空き時間にネームを形にでき、例えゴロンとしているときでも手軽に作業できるのが魅力です。
肝心な作業性ですが、セリフのテキスト量や文字サイズに合わせて自動でフキダシの大きさも変わり、コマ割りも直感的だったりとネーム作業を助ける機能が備わっています。
スマホだと描きにくい「絵」は、3Dモデルにポーズや表情を設定して自在にアングル操作ができたり、アップロード画像や、ツール内で入手できる画像素材も簡単に挿入できます。もし「ここだけ絵を決めておきたい」となったときにもちょうどいい機能になっています。
ネーム→下描きへの作業移行をスムーズに #
作ったネームのPNG画像やセリフのテキストを書き出せるので、下描きに進むときはそのままクリスタなどの作画ソフトに読み込ませればとっても楽。
まずはスマホを使い、コマ割りとフキダシだけでネームを組む→PCやタブレットを開いて作画ソフトでじっくり絵を描き込む——という流れが実現します。
【おまけ】最初のハードルをさらに下げるには #
工程1(セリフやフキダシをページに割り振り)までをマンガプロット作成ツール「goron story」(ごろーりー)でやってしまえば、創作の最初のハードルをさらに下げてくれるかもしれません。物語やキャラ設定、セリフとページ管理などが行えるツールで、作ったセリフ(フキダシ)とページはマンガネーム作成ツールに流し込むことができるので、工程2(コマ割りと位置調整)だけをマンガネーム作成ツールでおこなうという方法もおすすめです。
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フキダシ・コマ割りネームが「楽なだけでなく、作品の完成度を高める」 #
シンプルな要素で作業が軽いのはもちろんですが、マンガ作品としての完成度を高められる可能性があります。
頭の中の作業が絞られ、視野が広がる #
ネームを描いているとき、人間の頭の中では本来「ストーリーの組み立て」と「絵の構図」という、性質の異なる2つの思考が同時に走り、複雑な作業が必要になります。話の流れを考えながら、コマ・ページ・話の区切りを調整し、同時に視覚的な要素も形にするのは大きな負荷です。
絵を後回しにすることで、ネームの段階では流れと区切りの判断に集中できます。構成がシンプルな分、判断をしやすく、俯瞰で物語を見ることが可能になります。初心者にありがちな「ひとつのコマに集中してしまう」のを防ぎ、ページや話単位での構成という視野の広い考えにシフトしやすくなるはずです。
修正コストが劇的に下がる #
絵を描き込んだ後にコマ割りを変えようとすると、せっかく描いた絵を消して描き直すことになり、心理的にも作業的にも大きな抵抗が生まれます。「直したいけど、これを消すのは惜しいな…」と妥協してしまった経験がある人もいるはずです。
フキダシとコマ割りだけなら、配置換えも文章の修正も数分で終わります。気軽に何度でも直せるので、結果的に完成度の高い構成に仕上がります。
客観的な読みやすさを確認でき、視線誘導をつくりやすい #
絵がない状態でページをめくると、純粋に「セリフの間」や「コマの配置による時間の流れ」だけが見えます。絵の力に判断を惑わされることなく、話や構成の良し悪しを客観的にチェックできるのも大きな利点です。
作ったネームを確認したとき、フキダシの形・その中に入るセリフのフォントも大切なのだと気付くはずです。例えば、一際目立つ太い字で表現されているセリフがあると自然と目がいき、視線誘導の大きな要素になっているのがわかりやすいです。
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集中して絵に取り組める #
ネームで話の骨格がすでに固まっているので、キャラクターの表情、ポーズ、構図が自然と見えてくるはずです。
弱々しさ・ギャグなどの気持ちや雰囲気は絵だけではなくフォントやフキダシの形で表現することもできます。ネームで固まっていればコマを形成する要素のメモになり、それに合わせて絵を描くことでシーンにブレが出ません。
また、コマの大小などを元に、どの程度描き込むかを判断できたりと、読み手の集中までを操れる完成度まで持っていきやすくなります。
この方法が向いている人・向いていない人 #
ストーリーを重視したい、読み進めやすさにこだわりたい人にはぜひおすすめしたいです。何度も構成を練り直すことができるので、コマ割りやネーム自体が苦手な人、ページをうまく割り振れない人にも向いています。
話作りを重視する読み切り作品や、ページ数の多い長編にも相性が良い方法だといえます。
一方で、絵の構図やポーズのアイデアが物語の発想源になっているタイプの作者には、必ずしも合わないかもしれません。その場合には、今回紹介した方法をそのまま採用せずに、フキダシやコマ割りを“中心”という程度に留め「必要なところだけ絵を描く」頻度の部分を調整するなど、自分に合った割合にアレンジしてみるだけでも作業が大幅に軽減されるはずです。
まとめ #
ネームの段階を「フキダシ・コマ割り」だけに絞り、キャラクターや背景などの絵は下描きの工程でまとめて描く。絵が重要な要素を占めていると思われがちなマンガという形態において下地としては不十分ではないかと心配になるかもしれません。しかし、描き手が思うよりも、読み手はコマ割りをヒントに文字のほうを追いかける傾向にあるものです。この方法は十分にネームの役割を果たし作品の完成を助けてくれる可能性を秘めています。
「描き直しが多くて心が折れる」「完成までが遠い」と感じている場合は、ネームの方法を変えるだけで、マンガ制作全体の進行が変わるはずです。
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