「ページがフキダシまみれ」「文字ばかりが目に付き、まるで挿絵つきの小説」
マンガ制作において、こうした「文字だらけ」の壁にぶつかる人は少なくありません。そういった自覚があるならむしろ素晴らしいです。
文字がびっしりつまったマンガを読みたいと思うでしょうか。マンガの最大の強みは、絵と文字の相乗効果によるテンポの良さです。せっかく良いストーリーが作れても文字だらけマンガになってしまってはマンガという手段を選ぶ意味がありません。
この記事では、マンガが文字だらけになってしまう主な原因から、対策として有効なプロット段階での準備からネームでの具体的な「引き算」のテクニックまで、絵やマンガならではの表現で魅せるマンガ作りのコツを解説します。
なぜページが文字だらけになってしまうのか? #
対策を立てる前に、まずは文字が増えてしまう原因を自覚することが大切です。主な原因としては以下が挙げられます。
- 読者への「伝わらないかもしれない」という不安
「絵だけでは状況や感情が伝わらないのでは?」と不安になり、キャラクターの行動理由や心情をすべてセリフやモノローグで補足しようとしてしまう心理です。 - 設定や世界観の説明が多すぎる
SFやファンタジー、サスペンスなどのジャンルで、独自のルールや背景、専門用語を一度に理解させようとするあまり、解説役のキャラクターが長々と喋り続けてしまいます。 - プロット(文章)をそのまま文字起こししている
テキストベースのプロットを、「マンガの表現(コマ割りや構図)」に翻訳しきれないままページに流し込んでいる状態です。
私もやはりこういった原因を気にかけて作品作りをしないと文字ばかりでフキダシが溢れてしまう事態に陥ります。私の場合は特に「伝わらないかも」という不安からテキストが長くなりがちですが、自分なりに対策をすることで文字量を減らしています。
ネームをスッキリさせるために「プロット段階」でやるべき仕込み #
文字過多を防ぐための戦いは、ネームを描く前の「プロット段階」から始まっています。以下を意識してプロットを仕込んでおきましょう。
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ページ配分の目安(ハコ書き)を決める
全体のページ数に対して、各シーンを何ページで描くかの割り振りを決めておきます。これにより、1ページに情報を詰め込みすぎるのを防げます。 -
「状況」を明確にする
そのシーンの舞台設定をハッキリさせておくことで、「場所や時間などの状況を説明する絵(ロングショット)」や「キャラクターの表情」を置く計算が立ちやすくなります。 -
見せ場をつくり、緩急を付ける
コマ割りの緩急を付けて、文字量をコントロールします。その話の中で最も見せたい大ゴマや見開きをどこにするかを決めておき、そこには決定的な一言のみ、もしくは一切セリフを入れずに絵を見せるようにするのです。前後のコマには文字量が多くなるかもしれませんが、全部が文字だらけという印象は薄れ、逆に「読ませるコマ」として役割を持たせることができます。 -
余計な情報を「削る」作業をおこなう
プロットの時点で、セリフはあらかじめ短く整理しておく意識を持ちましょう。特に、『私はこう思う』の『私は』のような、絵を見れば誰のセリフか分かる『不要な主語』が入っていることはよくあります。
私も実際にやっていて、この「ネームに入る前の準備」がとても効果的だと感じます。「余計な説明をしすぎでは?」という意識で読み直して整理するだけでも意外と削れる部分が多いものです。
文字だらけ解消!ネーム時の実践的アプローチ #
ネームを起こす際、プロットにある文字情報をどのように「絵や表現」に置き換えていくか、具体的なテクニックを紹介します。
① テキストから絵や動きへの置き換え #
「悲しい」「悔しい」といった心の中のセリフは、最も絵に置き換えやすい部分です。直接言葉にしなくても、キャラクターの身体の動きや癖が読者に伝えてくれます。
- 例
文字で状況や感情をすべて説明をしていますが、絵より文字ばかりという印象です。
↓ 左のコマのセリフを思い切って取っ払います。
マンガの絵には説得力があるので、状況も感情も読者に届けてくれます。
余計なセリフを読まなくて済むだけではなく、セリフの無いコマによって間や余白が生まれることで悲壮感が高まり、より感情が伝わりやすくなります。
② 設定はセリフではなく「シーン」としてつくる #
世界観やルールの説明をキャラクターの口から一気に喋らせる(説明台詞)のは避けましょう。作中で「実際にそのルールによってトラブルが起きるシーン」を描くのが鉄則です。
- セリフ説明の例:「この街では夜9時以降に外出すると、警備ロボットに見つかって即座に逮捕されるルールなんだ」
- 絵で魅せる例: 夜9時のチャイムが鳴った瞬間、通行人が血相を変えて逃げ惑い、逃げ遅れた人がロボットに捕まるシーンを2〜3コマで描写する。
③ 「リアクション」で区切り「図解」を差し込む #
どうしても削れない長台詞がある場合は、1人が一画面で喋り続けるのを避け、途中で「聞き手の表情(納得、驚き、疑問など)」のコマを挟んでフキダシを小分けにします。 また、複雑な位置関係や作戦説明などは、言葉で長々と説明するよりも、作中で「簡易的な地図や作戦図」のコマを開くことで、文字量を劇的に節約できます。
④ 「1ページあたりの総文字数」の目安を持つ #
客観的な数値基準を持つことも大切です。一般的な商業マンガでは、1ページあたりの総文字数は150〜250文字程度、フキダシの数は4〜6個程度が読みやすい目安とされています。ネームの段階でこれを明らかに超えているページがあれば、セリフを削るか、ページを割る(増やす)検討をしてください。
文字過多を防ぐネームの制作手順 #
いきなり絵とコマ割りとセリフを同時にやろうとすると、画面のコントロールが難しくなります。以下のステップを踏んでネームを作成することをおすすめします。
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文字ネーム(セリフの配置)
最初は絵を描かず、プロットから持ってきたセリフやモノローグをページごとに配置します。文字の大きさやフキダシもこの時点で決めておくと以降の工程がやりやすいです。
「めくり(偶数ページの最後のコマ)」を意識して文字を割り振ることも大切。この工程で全体の文字密度を視覚的に把握できます。
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大まかなコマ割りと視線誘導
配置したセリフの量に合わせて、1ページを何コマに分けるかを決めます。読者の視線が右上から左下へスムーズに流れるように意識します。
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構図の決定とフキダシスペースの確認
カメラの距離(アップ・引き)や角度に変化をつけつつ、アタリを描いていきます。このとき、フキダシのための「白い余白」をはじめから画面の構成要素として計算し、スペースを確保しておくことが重要です。
【まとめ】セリフを削る勇気で、読んでもらえるマンガへ #
文字だらけのページからセリフを削る作業は、最初は「伝わらないのではないか」と勇気がいるものです。繰り返しになってしまいますが、私も同じでした。しかし、思い切って言葉を削ることで、キャラクターの繊細な表情や、残された一言の重みが劇的に際立つようになります。
つまり文字量を減らすことは、読者が引いてしまうのを防ぐだけではなく、見てほしい部分が見てもらいやすくなることにつながります。
説明しきってしまうより読者が「絵を見てキャラクターの心情を推察する余白」を残すことこそが、マンガの面白さにもなります。
「このセリフ、絵だけで表現できないか?」と自分に問いかけながら、引き算の表現に挑戦してみてください。